元刑務官が明かす 死刑のすべて

 坂本敏夫『元刑務官が明かす 死刑のすべて』(文春文庫、2006年)を読んだ。最近はとにかく片っぱしから死刑関係の本を読もうとしている。死刑判決が連発していることと執行が続いていることを憂慮している。死刑制度に対して、とにかく黙っていたらあかんという気持ちになっている。そのためにはもっと情報を知らないと自分の頭のなかでこの問題をどう見るのかという整理ができない。

 学部生のときに何冊かは死刑関係の本を読んだことがある。当時、死刑制度の問題に関心を寄せていたんだろうなあ。でも、その内容は頭から完全に抜けている。恥ずかしい。

 今回読んだ本は、刑務官として、実際に執行にもたずさわったことがある坂本さんの視点から死刑がどのようなものなのか、確定死刑囚がどんな生活を送っているのか・送らされているのかが描かれていた。刑務官や元死刑囚として獄中にいたことがある人以外、実態を知ることは難しい。そういう意味においても、この本は読む価値がある。また、執行には、それに関わる刑務官がいる、つまり人の生命をうばう作業を仕事としてやらされている人たちがいるということも考えさせてくれるという意味でも、読んでみるべきだと思う。私たちはそのことをともすれば忘れがちではないか。法務大臣が直接、執行に関わるわけではないのだから、それを執行する人がいるというのは当然のことなのに。

 坂本さんは死刑制度の存置には反対していないけれど、執行には反対している。それは刑務官という仕事で実際の状況を知ったことから出てきた彼なりの結論なんだろう。でも、私はその論理には納得できない。実際に執行が停止されていたとしても、制度が残っている限り、執行の可能性があるからだ。韓国は事実上の執行停止国となった。それはそれで喜ばしいことだけど、手放しで喜んでいるわけにはいかない。制度というものが残っていることの危険性を考えてしまうからだ。

 今は、他の死刑関係の本を読んでいる。とにかく今はできるだけ多くの書にあって、自分なりの考えを固めていきたい。