それでも彼を死刑にしますか

一昨日の夕方、生まれて初めてぎっくり腰を経験。歯磨きをしているときに、前かがみになった瞬間だったかな?いきなり、「ぐきっ」という感覚とともに激痛が走った。我慢できない痛みが襲う。すぐに、松江の日赤病院の救急外来へ。というわけで、この数日はあまりネットへのアクセスはしなかった。その前も出張が続いていたから、メールの返信をほとんど書いていない日々が・・・。一方、移動時間やベットで休んでいるときに読書三昧。今は、ちょっといろいろあってストレスが極度にたまっていて、なかなか仕事に打ち込めない。そうすると、漫画や刑事関係の本や中東関係の本に没頭してしまう。読書は現実逃避の手段?となりつつある今日この頃。

最近、読んだ本

1. 山本譲司『続 獄窓記』(ポプラ社、2008年)
2. 吉岡逸夫イスラム銭湯記−お風呂から眺めたアフガン、NY、イラク戦争』(現代人文社、2004年)
3. 堀川惠子『死刑の基準−「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社、2009年)
4. アモス・オズ『わたしたちが正しい場所に花は咲かない』(大月書店、2010年)
5. 平田伊都子『ピースダイナマイト アラファト伝』(集英社、1994年)
6. 大谷恭子『それでも彼を死刑にしますか−網走からペルーへ―永山則夫の遥かなる旅』(現代企画室、2010年)
7. 塚田努『だから山谷はやめられねえ−「僕」が日雇い労働者だった180日』(幻冬舎文庫、2008年)

他にはたくさん漫画を読んだなあ。読んだ漫画は神戸の自宅にほとんど置いてある。そうそう、はまりそうなのは、『深夜食堂』。食べ物関係の漫画は私をとても幸せにするもんなーー。この漫画、私に買ってください、と言わんばかりの内容。とりあえず2巻まで購入。

上記に挙げた本のなかで、とにかくぴか一だったのは、堀川さんと大谷さんと山本さんの著書。あとは、マッチョ性を妙に感じさせる『イスラム銭湯記』(現代人文社から発刊されているからもっと深い内容のものを期待したのに・・・。でも、読み物としてはおもしろい箇所がたくさんある。でもねえ、途中からマッチョな内容に耐えられなくなる自分がいるのに気がついたな。)。平田さんの『ピースダイナマイト アラファト伝』は時間つぶしのために読んでしまった感がぬぐえない。塚田さんの本もだ。

アモス・オズの著書は、いかにもシオニスト左派らしいオズの講演録とインタビューだった。特に新しい発見でもないけれど、しいて言えばシオニスト左派の認識の問題と「和平」の限界が簡単に見える本だった。途中で少々不快にもなったし。植民地主義レイシズムの表裏一体の関係がまったく見えてこないし、見ようとしていないこと(そう考えまい、とする、というべきか)があまりにもはっきりしていたからだ。オズの論調は、パレスチナイスラエルの「共生」や「和解」を「単純」に求める/願う人々の間では簡単に受け入れられるんだろうなあ。その問題をどうすべきか・・・、ということをたまに考えてしまう。

さて、大谷さんと堀川さんの著書はいずれも永山裁判関係のもの。ぐいぐいひきこまれていくような感覚に陥りながら、1ページ、1ページ読み進め、内容に夢中になりながらも、<永山裁判>を現代社会で再考する意味について考えさせられたのだった。永山さんの生い立ちと主張、裁判での論点、判決の変遷に振り回される永山さんの<生と死>、そして処刑。船田判決の意義はどこにあり、それがいかにして恣意的に解釈されてきたのか。あるいは「永山基準」の解釈に対する都合のよい解釈、ないしは取り出しというものが、死刑制度にどのように関わりあうのか、ということを考えさせてくれる本だった。最近読んだ本のなかでは、ベストと言うべき2冊。

昨晩から、少年法関係を読み始めた。明日には読む終わるかな。

獄窓記

忙しかった7月を終え、現実逃避したくなっているせいか、つい本を読んでしまう。研究に直接関係するものよりも、とにかく、刑事関係のもの。小さいころからの生活環境のせいか、刑事事件関係、受刑者の権利、冤罪、死刑制度(今はこれが一番の関心)、社会排除、社会防衛論、刑罰の意味等に関心がある。それなりに稀有な家(人はそれをインテリ家庭ともいうようだけど、どうなんかなあ。社会性を考えさせられる環境があったということか)に育った影響は大きい。この点はまた一度自分のことを振り返る上で、じっくり考えてみたいと思う。

あ、でも、朝、依頼されていた連載エッセイの第一回目を終えた。指定された分量は多くない、というか、とても少ないけど、書いて見ると短く書くのは大変で結果的にずいぶん多くなった。知り合いのイラク人女性(イラクの母とでもいうべきか)について。

昨日は、山本譲司『獄窓記』(新潮文庫、2008年)を読み終わった。この本も話題になっていたのに、読んでいなかった。もともとは他の出版社から出ていたはず。実に獄中生活がよく描かれてる。といってもそれは一端でしかないのだろうけど。社会的に排除されてきた人々と犯罪の関係を考える上で参考になる。皆、幸福になる権利はある、とはいうものの、その権利にアクセスしにくい状況、権利を知ってそれを行使するための環境がない場合が多い。人は「平等」であって、実質的には「平等」な社会ではない。だから、法による正義を人権と格差と反差別の視点からとらえなおしていかないといけないのだ、と思う。

ああ、もう少し中東関係の本を読まねばならないはずだけど、ここのところ、なぜか進まない。先週、先々週は読んでたんだけどね。でも、今日は古本屋さんから新しい本が届いたので、今読んでいる本が終わったら、そっちにいこう。

今読んでいる本
堀川恵子『死刑の基準−「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社、2009年) この本は、上記の本を読み終わってから、そのまま読み始めたもの。最初の方を読んだけど、かなり夢中に。今日は生協の食堂で食べながら、また読んでしまった。

今日、届いた本
ハコボ・ティママン(川村哲夫訳)『レバノン侵攻の長い夏−イスラエルからの反省』(朝日新聞社、1985年)

あと、生協で買った本
初川満『国際テロリズム入門』(信山社、2010年)
2009年に出た専門書の方を先に買ったけど、まだパラパラとしか読んでないので、(持ってるけど)を読まないとなあ。2009年に出た本というのは以下のもの。
初川満『テロリズムの法的規制』(信山社、2009年)

ああ、今日はまた生協で他の本を2冊注文しちゃったし(その前に注文したものが2冊あるや)、古本屋さんに注文しているものがあるから、どんどん来てしまう。追いつかない・・・。

さて、前期最後の採点が終わったので、これからまた読書して、寝ようっと。

累犯障害者

今日は午前中に大学に行って、オープンキャンパスに参加。私は11時半くらいから13時半くらいまでに仕事があるだけで、そのあとは特に用事はない。なので、帰宅。帰宅途中に自転車がパンクしたので、大学の近くにあるバイク屋さんに持って行ったところ、直してくれるとのこと。よかった。明日の夕方までには直りそう。そのあと、この辺で一番大きな本屋さんに行き、本を三冊購入。

昨晩は結果的に、ずーっと読書してしまった。何を読んだかというと、次のもの。

1. 山本譲司累犯障害者』(新潮文庫、2009年)
⇒大変評判になった本の一冊。読んでいなかったので、今頃。著者が獄中にいたときの経験から、何らかの障がいを持つ受刑者、障がい者に対する冤罪事件、ろう者間の犯罪事件等を追ったもの。彼は大変温かい人柄を持っていると思う。政治家としてやっていけなくなったこと、実は大変残念。福祉の意味を考えさせられるとともに、今まで考えてもいなかったろう者間のコミュニティのことなどを想像してみた。私は死刑制度や社会的排除と受刑者の問題に強く関心があるのだが、受刑者が<社会復帰>するために必要となる受け皿が適正に制度化され、アクセスしやすくならないと社会排除は続く。そんなことを考えた本だった。一つ気になったのは売春観。うーん。モラルとして売春をみていいのか。社会のジェンダー従属関係をみる方が先だと思うんだけどね。これだけは歯痒かった。

2. 橘由歩『身内の犯行』(新潮新書、2009年)
⇒この本は自分で買ったものではない。友人がくれたもの。じゃなかったら、たぶん手元にはない。買うことはないと思うから。でも、人からもらうとなんとなく読んでしまう。読んでみての感想。最初はなるほどと思いながら読み進めた。親密圏内にある者たちの間で起きる犯罪。DV被害から逃れるために夫を殺害した女性。抑圧的な親を殺した子ども・・・。子どもの話は読んでいて、大変つらくなったが、そして非常に考えさせられたが、DV被害女性による夫殺人に関する分析は、かなりネガティブな意味で気になった。DVのサイクル。逃げ出したくても逃げられない。経済的理由、家の問題等。それはいい。事実、そうだと思うから。でも、DV被害者が一度逃げ出して、加害男性のところに戻る、ということに関する記述に関しては問題があるように思う。戻りたくて戻っているわけではない、という人も多い。家を出て行くところもない人。シェルターのことを知らない人。実家にいられなくなり、家に帰るしかなくなった人。離れられない<情>。理由はいろいろだ。問題は、著者がこのように加害男性のところに戻った女性のことを、ともすれば批判と受け止められかねない表現をしていること。結構、不快になってしまった。

女性を責める社会。男性が女性を責める。女性が女性を責める。自分は絶対的に安全圏にいながら、<逸脱>行為をした女性たちを責める人々。私はそんな視線が嫌いだ。

占領地ガザ、ほか

本当はやらないといけないことばかりあるけれど、思ったより仕事ができていない日々。暑くて疲れてる、ことも大きいかな。私は湿気が苦手だからなあ。イギリス時代がよかったー。夏も涼しかったし。湿気もあんまりないし。快適だったなあ・・・。日本の夏はほんまにつらい。

と書きつつも、今週は新潟での恒例の集中講義をやってました。月曜日から木曜日まで。15コマ分。ふう。疲れたー。日曜日は東京で所属学会の幹事会があったので、それに出席してから新幹線で新潟へ。

いつも、新潟に滞在するたびに、いろんな仕事をしてしまおうと思うんだけど、一日に4コマ連続教えると、さすがに疲れて、ほとんどできず。結局、持って行った仕事はできず。一つだけ、短い、短い原稿を書いたか。でも、コラムも監訳もできず・・・。で、結局、夜はホテルで読書してしまった。それはそれでいいんだけどさ。

読んだ本は以下のもの。こういうときはいつも漫画もたくさん読んでしまう。漫画好きだからなあ。夫も漫画が大好きで、確か先週の土曜日?は夜は二人でずっと漫画を読んでしまった(笑)。二人とも、現実逃避の手段にしてるね。漫画に没頭して。

グロリア・エマソン『占領地ガザ−抵抗運動インティファーダの日々』(朝日新聞社、1991年)
⇒この本、読んでよかった、と思う。1987年に始まった第一次インティファーダ下のガザの様子を断片的に知ることができた。ラジ・スラーニ氏のこの時代の活躍も書いてあって、それは私にとって新情報だった。後はガザの女性たちの話もね。アラビア語の表記が問題なのよね・・・。名前の表記くらい、なんとかならなかったのかなあ。まあ、私もあんまり人のこと言えないかもだけどね。かなり気になってしまった。

長田鬼門『死刑のすすめ−積極的死刑拡大論』(東洋出版、2010年)
⇒読んでいる途中から吐き気がしそうだった。というか、吐き気がしたけど、読み終わらないと批判もできないかと思い、必死に読んだけど・・・。結果としては二つ。非常にくだらない本。批判するにあたらず。論理的にも矛盾だらけ。読む価値、まったくなし。ある意味、押しつけがましい宗教本とも思えるような感覚に陥る本だった。それから、この著者、法律のこと、法曹界の役割のこと、もっと勉強すべし。まったく分かっていないらしい。ということで、読んでも意味ない本の一つだと私は思ったわ(それは死刑推進派だから、という意味ではなくて、勉強にならないからお金と時間の無駄、という意味で)。

水木しげる『ビビビの貧乏時代』(集英社、2010年)
⇒小さい頃、水木しげるの強烈なファンだった私。ゲゲゲの鬼太郎が大好きだった。これは別にテレビの影響でもなんでもなくて、とにかく好きな漫画だった。強烈な印象を与えてくれたからなあ。松江に引っ越してから、彼の本を積極的に買うように。ほんまに貧乏やったんやなあ、と本を読むたびに思います。水木しげる、という人の極めて個性的なキャラクターにも惚れます。

いくえみ綾『私がいてもいなくても1』『私がいてもいなくても2』(集英社、2010年)
⇒名前は知ってたけど、読んだことなかった。女性を主人公にした漫画好きなので、結構、夢中になって読んだよ。これ、おもしろいよ。物語として。

さいとうたかを鬼平犯科帳43』(リイド社、2010年)
⇒とりあえずこのシリーズが出たら、立ち読みしたり、食堂で読んだり、買ってみたりするもの。私、基本的に、「刑事もの」(といっていいのかな?)好きなんだよね。『弁護士のくず』も大好きだし。ついでに『新・逃亡弁護士 成田誠』も出たので、先週の土曜日に買って読みました。とりあえず続きが始まってよかったわ。どうなるかと思ってたのよね。

細野不二彦『ダブルフェイス22』(小学館、2010年)
⇒このシリーズもまあ、機会があれば読んでるので、その続きという感じ。やっぱりビックコミックス系は買ってしまう・・・。好きやなあ。

新潟で読んだ本はこんな感じ。松江に戻ってきてからは・・・。昨日(金曜日)、さっさと採点を終わらせたので、今日は本当はすることたくさんあったのに、ついつい本を読んでしまったー。採点みたいなものは、一気にやらないと終わらないので、性格的についついさっさとやるんだけど、そうなると本に没頭してしまうときがある。あ、でも、一応、今日は前々から頼まれていた友人のパレスチナ報告(かなり長い。2万字近い?)を見て、いろいろ直してあげた。これには数時間かかったわ。この後は、本当は担当しているあるサイトの更新のために翻訳をしようと思ったけど、トイレ掃除、床掃除したあとにお風呂入ったら、なんか力尽きてしまった感じ。日本の古本屋のページでまたいろいろ本を探し、4冊注文。後は大学の生協のウェブサイトで2冊注文。そして今、ブログ書いてる。

今日読み終わった本は以下の二冊。

浅井久仁臣『パレスチナは戦争館−硝煙の街角15年のグラフィティ』(情報センター、1985年)
⇒なんでこの本を読んだのかは自分でもよくわかってないんだけど、ベットの脇においてあって、長らく読んでなかったので、読もうかなあとページをめくったら、結構、夢中になってしまった。ジャーナリストの浅井さんのイギリス留学以降のジャーナリストとしてのレバノン取材とエピソードはそれなりに参考になる。おもしろい。レバノン内戦時代のこと、イスラエルレバノン侵攻関係のことを研究上、もっともっと知りたいと思っていたところもあるので(手に入る本はそれなりに読んでいるけど)、読んでよかった。収穫あった。

和光晴生『日本赤軍とは何だったのか−その草創期をめぐって』(彩流社、2010年)
⇒友人がブログで紹介していたので、ついつい買ってしまった。そして昨日、生協に届いた。そして、浅井さんの本を読み終わってから、一気に読んでしまったー。あああ、今日はこの本で終わりか?とちょっとだけ悲しくなったので、友だちの報告の手直しをしたという感じかなあ。私は、新左翼系の運動が大変嫌いだ。フェミの視点からすると、ウエーという感じがする。日本赤軍には興味を持ったことも、今後持つこともないと思うけど、リブを生んだ背景にある新左翼系の運動のマッチョ性を理解するためにも一応、必要な時には読むことにしてる。で、なぜ彼の本を読んだのか?前作の『赤い春−私はパレスチナ・コマンドだった』が読み物として面白い、と思ったことがあったからだと思う。別に和光さんという人に興味があるわけではないし、これからも持つことはないとは思うけど、パレスチナということを考える上では読んでおいてもいいかなあとは思ったので前作を買ったというわけ。今度の作品は、そうねえ、一つふーん、と思ったのは、彼が書いたことが本当かどうかはこの本だけでは判断できないけれど、日本赤軍パレスチナ連帯といいつつも、現場に活動の拠点がなかった、ということ。その点に批判的に関心を持った。やっぱり駄目やん、って思ってしまった(それが正しいかどうかは分からないんだけど)。いかんせん、マッチョだよね。運動のやり方。それから、パレスチナ人の解放闘争を自分たちの運動のために単に利用してたんだろうなあ、とも思い(これは前から思ってたけど)、不愉快な気分にもなってしまった。読んでよかった、とは思ったけど、この本のなかで問題だと思った点は一つ。重信房子さんの出産等のプライバシーのことを書き、それを批判的に描いていること。極めて個人的なことなのに、それを運動の批判のなかに含めるのはどうかと・・・。新左翼系のおとこたちのなかに見られる女性に対する<モラル>というか、性道徳の押しつけがまさ(自分たちはどうよ、って感じだけどさ)を感じてしまった。

ああ、ブログを書いていたら、10時過ぎてしまった。ガッサーン・カナファーニが生きた時代、生きていた空間をもっともっと知りたい、と思って、レバノン関係の本を注文したり、そんなところから、浅井さんや和光さんの本も読んだのかなあ、という気もしてる。新しい本が届くのが楽しみ。今日はこのまま、また読書して、早起きしてやるべきことをやってしまおう。今から読む本?ちょっとだけ読みかけてるけど、山本譲司累犯障害者』(新潮文庫、2009年)。あるいは、堀川恵子『死刑の基準−「永山裁判」が遺したもの』(日本評論社、2009年)かな。肥田舜太郎『増補新版 広島の消えた日−被爆軍医の証言』(影書房、2010年)にするかも。いずれにせよ、ベットに行ってから考えるか。ではおやすみなさい。

死刑制度関係の本

またもや久しぶりのブログ。いろいろ読書はしてるんだけど、なかなかブログで紹介する時間がなくて・・・。

最近は中東関係以外の本では、やはり死刑制度関係の本を読むことが多い。この一ヵ月くらいでいうと、以下の本を読んだ。

益永スミコ『殺したらいかん 益永スミコの86年』(影書房、2010年)
⇒こりゃ、いい本だわ。一気に読んでしまいました。益永さんの名前は聞いたことがあった。どんな人生を送ってきたのかなあって思っていたのでした。この本を読む限り、自分にまっすぐな気持ちで生きてきた方なのがよくわかりました。自分の良心に従い、妥協を許さず。すばらしいです。影書房の本は、ヒットが多いわね。やっぱり。

坂本敏夫『死刑と無期懲役』(ちくま新書、2010年)
人は変われる。そうかもしれない。刑務所や拘置所で現実を見てこられた方の本は非常に説得力がある。人は変われる。そう思いたい。でも、本当にそうなんだろうか、と思うこともある。でも、そう思わないと、死刑制度の問題に取り組んで行けないかもしれない。

新潮45」編集部編『凶悪−ある死刑囚の告発』(新潮文庫、2009年)
昨晩、一気に読んだけど、感想は何とも書けないな。死刑制度そのものを問う本ではない。あくどい事をして、何よりも貴重な人の生命をもてあそんで生きている人々がいることに社会の気持ち悪さを感じる。なぜ、人は人に対してかくも残酷になれるのか。そしてその残酷性を平気でかくして生きることができるのか。

とりあえず、死刑関係の本だとこれくらいかな。あ、漫画でいうと、「弁護士のくず」の10巻にも裁判員制度と死刑関係の話があった。昨日、電車のなかで読んだんだった。

今日、大学の生協経由で買った本は、長田鬼門『死刑のすすめ−積極的死刑拡大論』(東洋出版、2010年)。とりあえずこれを読むか。

研究に関係する本ではジャン・ジュネ『シャティーラの4時間』(インスクリプト、2010年)を途中まで読んでる。金曜日に新幹線のなかで途中まで読んだ。あとは、これも途中になってるけど、グロリア・エマソン『占領地ガザ』(朝日新聞社、1991年)がある。これも近いうちに読み終わらないと。ラジ・スラーニのことも書いてあるから、必死に読んでるんだけど、なぜかなかなか進まない。翻訳書は読みにくいからかなあ。酒井啓子『<中東>の考え方』(講談社現代新書、2010年)は一気に読んだ。中東関係の入門書。学生さんにはちょうどいいね。一部パレスチナの記述が気にならないわけではないけど。

そのほかいろいろ読んでる。
吉田修一『パレード』(幻冬舎文庫、2004年)
⇒読み物としてはおもしろい、です。吉田修一らしいな。

道あゆみ(監修)『ドメスティック・バイオレンス−絶望のフチからの出発』(じっぴコンパクト、2009年)
⇒一気に読んだ。電車のなかで。この本、ずっと読みたいと思ってたから。所属学会の大会のときに買ってよかったわ。かなり集中して読んだ。学生にもすすめたい。

植田智加子『南アフリカらしい時間』(海鳴社、2010年)
⇒この本、相当ヒットです。読む価値ある。絶対にある。マンデラ氏のことを知ることができるからなのではなくて、著者の植田さんという方の感性に大変ひかれてしまったから。この本は運営委員をしている団体の総会のときに注文したもの。今年読んだ本では今のところ、一番いい本に入るな。

山根寛・木村浩子『土の宿から「まなびやー」の風がふく』(青海社、2009年)。
⇒これもヒットやん。純粋にすいすい読んだよ。活動が想像できるような気分になった。まなびやー、行ってみたい。

梁英姫北朝鮮で兄は死んだ』(七つ森書館、2009年)
⇒これもかなりひきこまれて読んだ。「帰国事業」の裏腹には、日本社会の差別構造と植民地支配の負の遺産(今も生き続けている)がある。読み手の立場としてはそれを考えずにはいられなかった。

レイラの終わらない戦争

この間、論文を2本を書いてたから、毎日、さまざまな文献は読んでたけど、それはまたいつか紹介することにする。それよりももっと楽に読める本をあげる。

草薙厚子『レイラの終わらない戦争』(光文社、2003年)

イラク関係の本やパレスチナ関係の本はたいてい、手にすることにしているので、こちらも古本屋で購入してみました。レイラというからには女性なんだろう、と思ったので、女性の視点から2003年のイラク戦争を描いた本は興味がありました。草薙さんはイラクの専門家ではないので、どうかなあとも思ったけど。

すぐに読める本。展開はそれなりにおもしろい。でも、それほど深みはある本ではない。一物語としては読んでみるおもしろいかも。ただ、一つ感心したのは、草薙さんの「やさしさ」。彼女はとても優しい人だと思う。正義感もあるように感じる。それがこの本のよさだとも思った。

レイラさん、どうなったのかな。レイラさんを含む多くのイラクの女性たちがどのような<生>を強いられてきたのか、私にはとても想像できないけれど、いつも気になるところ。いつの日か、イラクを訪ねたいと思っているけれど、それはそんな思いがあるからだ。

被差別の食卓など

カンボジアから戻ってきました。そう。女性に対する暴力やDV法の調査に行ってたのです。といっても数日だけなのですが。大学の出張の関係で滞在日数がとても短くなってしまいました。プロジェクトチームのメンバーのなかには、まだ残っている人もいます。暑いので体調を壊さないといいなあ。でもあのおいしい食べ物があるから、大丈夫ね、きっと。

カンボジアにいたときに読んだ本をあげておきます。いつも海外に出るときは、何冊も持って行くんだけど、結局、一冊か二冊しか読まないうちに帰ることになります。これからはそんなに持っていかないようにしなくっちゃ。重いもんね。現地で資料を入手するので、その分も重くなっちゃうし。

カンボジアにいるときに読んでハマったもの。
上原善広『被差別の食卓』(新潮新書、2005年)。
この本は、森枝さんの本を読んでいるときに参考文献か何かで挙げられていたので、早速買って読んでみました。あ、おもしろーい。純粋におもしろい、です。各地域で差別されてきた民衆が差別化のなかでどのような食べ物の文化を形成してきたのか、という視点がまずいいですね。食べ物の歴史というよりも、食べ物の歴史に焦点をあてることで、差別されてきた民衆の抵抗の食文化の歴史を知るというべきかもしれません。私にとって一番印象深かったものは、イラクのガジャルの話です。イラクにもロマの人々が住んでいるというのは他の人の本を通して知っていたのですが、その人たちがサダム・フセイン政権崩壊後にどうなってしまったのか、気にしていたのです。どうやら大変な目にあっているようです。庇護者がいないのだから。襲撃の対象になっているよう。パレスチナ人も襲撃の対象になっていますが、忘れられているのはガジャルの人々に対するもの。今現在、どうなっているのかもっと知りたいですね。

プノンペンの空港で買った本
Somaly Mam, "the road of lost innocence", Virago Press, 2007
この本は調査のあとだったこともあってか、飛行機やその後の東京出張中も時間があればずっと読んでいました。夢中になりましたよ。カンボジアの女児をターゲットとする人身売買は深刻。売られた先での拷問と強制「売春」。あまりにもひどい。著者のSomalyさんも勝手に「祖父」と名乗る人によって売春宿に売られ、そこで信じがたいほど苛酷な人権侵害を受けた経験を有している。のちに自分と同じような被害にあっている女児たちのための支援をはじめ、それがAFESIPの現在の活動につながっている。この本は日本語にも翻訳されているので、ぜひ一度、読んでみることをおすすめします。人身売買、女性や女児に対する暴力(男児もだけど)の問題を考える上で非常に参考になります。また、売春に従事している・させられている女性や女児たちに対する社会のスティグマをとらえなおす上でも読むべき本です。