狼たちの月

 フリオ・リャマサーレス『狼たちの月』(ヴィレッジブックス、2007年)を読んだ。毎日新聞に書評が掲載されており、内容にひかれて即購読。同書は、スペイン市民戦争中に反フランコ側で闘った男たちに対する厳しい追跡と弾圧の姿をアストゥリアスを舞台に追われる者の視点から描いた作品だ。

 市民戦争終結後から長い月日を経ても、執拗に追われる4人の男たち。治安警備隊員による家族に対する弾圧、村人の冷たい眼差し。山での厳しい逃亡生活のなかで、圧倒的に孤独な闘いを強いられている男たちには、故郷で安心して生活を送ることなど果てしなく遠い夢となってしまった。仲間が次々と殺されるなか、最後に残されたアンヘルはどうなるのか。著者はそれを私たちの想像力にゆだねている。

 絶望の小説。それが、同書だった。

 3月にはスペインに行く計画を立てている。私の英雄が眠る大地で、ファシストたちに命を奪われた人々のことを静かに考えたい。