死者はまた闘う

 武田和夫『死者はまた闘う:永山則夫裁判の真相と死刑制度』(明石書店、2007年)。実にいい本だ。今年第一のヒット(ってまだ一月だけどね)。

 「犯罪」というのは、どのように形成されているものなのか。動機と結果だけではない。そこには必ずや原因がある。そのことを再認識させてくれたのが、この本だった。結果に対する責任を有しているのは、その犯罪を行った者だけなのか。原因を追及することがなければ、その責任は犯罪を行った者だけに負わせることになる。その究極的な形として出されるのが死刑、である。

 犯罪を犯した者がその罪に向き合うこと(=反省)。そしてその者たちとともに生きる社会を構築していくこと。死刑制度に反対するときの根底にすえられなければならないのは、こういう思想なのではないか。武田さんたちが行ってきた「反省=共立運動」というのは、それを実現するための運動だった(過去形で書いていいのか分からないけど)のだと思う。

 この本のなかにすでに処刑された木村修治さんの文章が紹介されていた。心に沁みいる。「死刑は差別です。人間であることを具体的にしかも完全に否定するという、他に類例を見ない決定的な差別です。」(183頁)。

 死刑は差別なのだ。人間であることを否定することなど、誰もできない。国家権力は法律を制定する力を有している。裁判所は法を使って(解釈して)、人を裁く。これもまた国家権力だ。人間であることを否定する判決を下すということ自体が差別であり、巨大な国家権力の行使に他ならない。

 永山さんや木村さんが遺した思想を読みたい。そして胸に刻んでいきたい。そう思わせたのがこの本だった。