増補新版 日本死刑白書

 お正月に実家に戻ったとき、前坂俊之『増補版 日本死刑白書』(三一書房、1990年)を見つけた。何気なく取り出して読む始めるとぐいぐい進む。内容に完全にひきつけられてしまった。この本は18年も前に書かれたものだが、今でも十分に対応しうる死刑廃止論を提供している。

 なぜ死刑がいけないのか。冤罪の可能性が挙げられることが多いが、それだけでなく、他の論理も再度考えてみたかった。教育としての刑罰、残酷性と人間性、死刑囚の育った環境や学歴、どのような人が死刑判決を受けてきたのか、初犯か否か、死刑囚となること、死刑囚の家族など、さまざまな視点から死刑廃止を訴えることができるはず。それを分かりやすく説明していたのが本書だ。

 イスラーム諸国、イスラームと死刑に関しては、もう少し学びが必要だが、それを除くと本書はとても貴重だ。下手な刑法関係の本を読むよりも、ずっとためになる。

 日本社会の犯罪率は増加していない。横ばい状態。なのに、人々は犯罪が増えていると思っている。メディアの報道は事件関係に集中しているために、人々は犯罪が増えていると考えている。

 だから死刑は必要だと?犯罪率があがっていないのは、死刑があるからだと?それは違う。死刑制度はずっとあるのだから、そんな論理は成り立たん。

 殺人を禁止している国が、死刑制度を有していることで国家による殺人を認めるという行為は実に矛盾している。それは戦争を正当化することにもつながっている。国家が認めたから、あるいは国家が正当だと考えるから、戦争は認められる、というのか。そう、戦争と死刑制度はつながっているのだ。同じ論理じゃないか。国家によるお墨付きという点でにおいて。

 年が明けてから多くの本を注文した。死刑関係も多い。死刑制度に反対する論理を構築していくために、とりあえずは本を読み続けよう。