風の影

 カルロス・ルイス・サフォン「風の影」(集英社文庫、2006年)。なんでこの本を買ったのかなあ。スペイン内戦時のことも扱っていると小耳に挟んだからか。小説としてはそれなりにおもしろい。さすがに評判になっただけのことはある。でも・・・。なんか釈然としない。「忘れられない本の墓場」にあった一冊の本「風の影」の作者の過去を追跡していくことでストーリーが展開していく。ミステリーといえばミステリー。

 小説にでてくる「風の影」の作者フリアン・カラックスの過去が内戦とどうつながっているのか、もう少し政治的なつながりがあるのかと期待しすぎたのがまずかったんだろうなあ。たまに小説の中で出てくる共和国軍に対するイメージに比べると、アナーキストに対する表現は少々ひどすぎないか。たぶん、そのことが私の心証を悪くしちゃったんだろうなあ。

 主人公の少年とフリアンの恋愛が似ているのも、なんだかベタすぎる。「忘れられない本の墓場」と古本屋の設定はとてもいいんだけどなあ。