「ヒロシマ以後」の広島に生まれて

 女性史の研究者である平井和子さん『「ヒロシマ以後」の広島に生まれて:女性史・「ジェンダー」…ときどき犬』(ひろしま女性学研究所、2007年)を読んだ。この本が発売されてからずっと読みたい読みたいと思っていたのだが、本が届いてからなぜか読む機会がなかなかなかった。

 平井さんの最近の男性に対する考え方には同調できないところもあるが、第2章のオーラル・ヒストリーとジェンダーは実によかった。同じように原爆の被害を受けても、被害状況には階級、ジェンダーが関係していること。阪神大震災でもそうだったけれど、原爆の被害でも同じ様な共通点がみられる。女性のなかでも、朝鮮人被爆者、被差別部落出身者の被爆者に焦点をあて、オーラル・ヒストリーを聞きとっていく。そうすることで原爆被害が日本社会の矛盾とともに見えてくる。

 第2章は多くの人に一読をおすすめしたい。無名の女性たちの人生を綴ることの意義を私はこの本から学んだ。私も早いことパレスチナ難民の女性の物語を何らかの形にしよう。その作業をする上でもこの本は思想的に示唆を与えてくれた。