夕凪の街桜の国

 こうの史代さんの『夕凪の街桜の国』(双葉社、2004年)を読んだ。友人たちがブログなどで紹介していて、とてもとても読みたくなった漫画。映画化されて評判もよかったということもある。

 夕凪の街と桜の国(1)(2)に分かれていて、過去から現在に続くストーリー。原爆が投下された広島を経験した家族の三世代分を描いた物語。夕凪の街では被ばく者の主人公の皆実が恋人に問う。「うちはこの世におってもええんじゃと教えて下さい」。生き残った者の苦悩。彼女の生き残ったことへの問いは、アウシュビッツの生還者でのちに自殺をしたプリーモ・レヴィの苦しみと共通している。

 壮絶な経験をして生き残った者たちが、生き延びたことを自問せざるを得ないとはなんとも惨いことか。「何があってもこの世におってもええんじゃ」とその生を無条件に、そして絶対的に肯定したい。私はこの漫画を読んで、一人でそう感じてた。

 広島弁。懐かしいといえば懐かしい。幼い頃に山口県に住んでいた私には耳慣れた「方言」。私が住んでいたところは広島に近かったから、なおさら広島弁に近い言葉を話してた。会話のニュアンスが私の胸に突き刺さるように感じたのも、私が聞き慣れていたはずの言葉が「夕凪の街」のなかで展開されていたからだろう。

 これ、ほんまにいい漫画や。人にすすめよう。