破断層

 先日、名古屋で行われた広河隆一さんの写真展に行ってきた。写真展のために名古屋に行ったのではなく、運営委員をしている女性関係のNGOの総会に参加するためだった。総会で広河さんの写真展のちらしが目に入り、大阪へ帰る前に寄ってみることにしたのだった。

 サッカー場になったジェニーン難民キャンプの写真だった。友人に説明をしているときに、唇が震え、涙が出てきた。人の生活がいとも簡単に、そして残酷に壊された様子をこの写真は伝えていた。悔しい。心からそう思った。そこには家があったのに。そこには生活があったのに。生の否定。これほど悔しいことはない。パレスチナに限らず、人の生・生活が否定されることを私は悔しく思いたい。この感情がなくなったとき、私は平和学を教えることをやめよう。

 その写真展で広河さんが昔書いた小説「破断層」を買った。いやーー。この小説に関する感想はいかに書くべきかね。男のロマンをつづったといえばそうだし、マッチョといえばそれもそうだし。でも、それだけでは語れないものがある。それは広河隆一という人のパレスチナ人に対する愛情。レバノンパレスチナ人が「虫けら」のように殺害されることをこの人はどれだけ悔しく思ったことだろう。私が好む小説のつづりかたではなかったけれど、彼の強い、そして温かい気持ちを感じることが出来たという点で、とりあえず読んでよかったかな。