イラク:占領と核汚染

 梅田の本屋で写真家の森住卓さんの「イラク:占領と核汚染」(高文研、2005年)を見かけて、そのまま購入。家に帰って早速読んでみた。森住さんの写真のすばらしさは定評がある。イギリスに住んでいた頃も反戦デモの後の集会で彼の写真のコピーを広げて、写真展の呼びかけをしている人たちを見たことがある。劣化ウラン弾の影響を受けた子どもの写真が痛々しい。たとえ笑顔で笑っていたとしても、その子の将来を考えると複雑な思いがよぎる。

 森住さんはとてもやさしい視点で写真を撮られる方なのだろう。彼の気持ちが滲みでている写真が多い。戦争で傷ついた人々を正面から撮り、取り組もうとしてきた森住さんの写真に私も目が奪われた。拘束され、目隠しをされたまま連れて行かれる男性の写真をみたときに、私はパレスチナとシンクロした。イスラエル兵?私は一瞬、そう思った。イスラエル兵も米兵も同じやり方をする。だから一瞬、わからなかった。どちらなのかということを。私はパレスチナで何度か拘束され、目隠しをされた男性たちを見かけたことがある。一人の男性は、イスラエル兵が占拠しているあるパレスチナ人の家に連れて行かれ、恐ろしさの余りガタガタ震えていた。たまたまその家を訪問した私は、兵士たちに釈放するように交渉してみたが、だめだった。そのときの私にできたこと。この男性を安心させるために、今となりで外国人が見ていることを伝え、できるだけいっしょにいると伝えることだけだった。彼は後ろ手に縛られていた。しばらくすると彼はどこかに連れて行かれてしまった。どこか?それは分りきっていること。イスラエル軍の基地だ。拷問が待ち構えているかもしれないと彼は不安で、怖くて、震えていたのだ。

 森住さんの本のなかに知っている男の子の写真があった。私がアンマンで会ったときよりも幼いときの写真。彼に最後に会ったのが2005年。今はもっと成長しただろうな。成長しても彼の症状はよくならない。どうしたら彼が手術を受けることができるというんだろう。